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● ● Love & Peace-設定- ● ●
【3話目の大樹と一颯の会話】
「一颯、まだ起きてたのか?」 言いつつも、兄貴自身寝ていたような素振りはない。部屋の電気は消えていたものの、机の上には情報を集めていたのか、なんとか誰かに連絡を取ろうとしていたのか、ノートPCのディスプレイにいくつもの窓が開いている。 招き入れられベッドに腰掛けたと同時に、 「母さんだけでも、病院に行ってもらおうよ」 そう切り出したオレに、兄貴が眉間に皺を寄せる。 「………どうやって?このマンションの出入り口全てSPが固めてるんだぞ?しかも総帥夫人の母さんの顔なんて全員が把握しているだろうし、引き戻されるのが落ちだ」 椅子にどさりと座りながら大きな溜息を吐き、苛立ちまぎれに前髪をかき上げた兄貴に、 「だから、オレの友人に来てもらって、母さんと入れ替わるんだよ!」 噛み付くような勢いで言うと、兄貴が目を見開いた。 「…………なに?」 「ハリーだよ。ハリー・ブルックス。黒髪の。あいつなら、母さんと同じくらいの身長だし、なんとかなるんじゃないか?」 ここから出られないのなら、外から一人誰かを呼べばいい。ここが家でない限り、必ずそいつは『帰る』のだから、そのとき入れ替われば病院に行くことができるんじゃないか? それにハリーなら、頼めば協力してくれる。なんとなくだけど、そういう気がする。 オレのバックを知って離れていくなら仕方ないけど、今はそんなことより、ここを抜け出す策を考えるのが先だ。親父に会わないとなにも進まないんだ。 俺の案に兄貴は顎に手を当てて思案し、数度頷いた。 「入れ替わりか。そうだな。試してみる価値はあるよな」 「うん!」 「今夜はもう無理だから、明日の朝ハリーに電話してみてくれ」 「わかった」 どうせなにをしたって、ここから出られないんだ。それなら、手当たり次第やれることをやりたい。それに、もし失敗したって相手は総帥夫人のお袋だ。手荒な真似なんて絶対にできっこないんだ。 【4話目の大樹と使用人達の会話】 穏やかに見えているけれど、ピリピリとした空気を肌に感じる。 兄貴がぐるりとみんなの顔を見回した。 「もう話は知っていると思うが、昨日、父さんが銃撃を受けた。今、オレ達が把握しているのは、容態は不明だということ。そして、俺達全員ペントハウスに軟禁されたということ。この二つだ」 使用人達が神妙に頷き、兄貴の話の続きを待つ。 「君達は、Fグループの社員ではなく、ここ崎家の人間だと俺は認識しているが、それは間違っていないよな?」 兄貴が今一度、確認するように問いかけた。 警備会社はFグループ傘下だ。 あの男個人が勝手に動いていると思うが、確証はない。Fグループ上層部からの命令であれば、オレ達の意見を無視したやり方で、ガードをしてもおかしくはないんだ。 「私達は崎家でお世話になっている人間共です。Fグループは関係ございません」 兄貴の問いに、代表して執事が答えた。周りの人間も、同意するように頷いている。 たとえFグループが邪魔をしてきたとしても、オレ達の味方だと。 「もうすぐ、一颯の友人が一人訪ねてくる。その人間と入れ替わって、母さんを父さんがいる病院に行かせてやりたいんだ」 兄貴の言葉に、みんなが息を飲んだ。 「俺達はこのマンションから出るなと言われているし、マンション周辺SPだらけで、実際に抜け出すことは不可能だ。でも、外部から来た人間が”帰る”のは、当たり前だろう?」 「ご友人の服をお借りして、託生様を義一様の下へ送り出すということですね」 「あぁ」 ニヤリと笑う兄貴に、みんなの顔が輝き目を見合わせ頷きあい、 「承知いたしました。全力でご協力させていただきます」 全員一致で賛同し、それぞれの持ち場に散っていった。 Blogより転載。
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