秘密の小部屋
2012.08.21 (1/1)
目次
2012.08.21 23:00〜2012.08.21 23:11
地区予選
「やっぱり女子にもモテるんだな、高林」
弓道部の友人が溜め息まじりに呟いた。
高3にして美少女と見まごうばかりの高林泉はむさくるしい全寮制男子校の中での一服の清涼剤もしくは現実逃避の大事な大事なアイテムなのだがあの美少女のような不可思議な美貌は男にだけでなく女子にも有効だというのが、こういう場でしみじみとわかる。
インターハイ地区予選の会場に恋人である(一応、飽くまで一応、内緒の関係ではあるが)吉沢道雄の応援に駆けつけた高林に、周囲の女子高生たちの視線が凄じい。
ちらちら様子を窺うだけでなく試合そっちのけで高林をガン見してる女子までいる。
「そうなんだよね、モテるんだよね高林くんて」
苦笑しつつ吉沢が応える。
今に始まったことではないが、高林泉の一種突き抜けた美貌は結局、どこにいても目立つし、老若男女にかかわらず人の目を惹く。
タイプはまったく異なるが、ギイの尋常でないあのルックスとタメを張れる(いや、張り合う必要はこれっぽっちもないけれど)祠堂きっての美形なのだから、まあ、納得の現実なのだけれども。
注目されることが通常営業の高林は周囲のざわつきなどまったくおかまいなしで、相変わらずのマイペースでビデオカメラを片手に同伴している友人と、なにやら熱心に打ち合わせをしていた。
ふと、目が合う。
弓道場で大声は厳禁であることを承知の高林は、いつもならば『よしざわーっ!』と無邪気に叫ぶところを、ちいさく胸の前で手を振ってみせた。−−かわいい。
ああ、かわいい。ちくしょう、かわいいんだよっ!
「どした吉沢、顔、真っ赤だぜ」
友人が訊く。
「や。−−いいや、なんでもないっ」
平常心、平常心、平常心!
よし。
『吉沢がたくさん勝ってくれるとたくさん応援に行けて嬉しいなあ』
今年の高林はそう言って高校生活最後のインターハイ、婉曲的表現で吉沢に頂点を目指せと要求してきた。
昨年までのダイレクトな表現も吉沢を奮起させたがこの遣り方はこう、胸の奥がくすぐられるようで、たまらない。
夏休みになったらなかなか会えなくなるけれど試合があれば話は別。
「吉沢、前のグループ終わったみたいだぜ」
誰かが声を掛ける。
「おう」
途端、心がポンと空洞になった。
弓を手に板の床を大股に進む。まっすぐに前を見る。的を射ることだけしかもう脳裏にはなかった。
(おしまい)
【業務連絡】深読みよろしくです ^^> #地区予選 [#地区予選とは] via ついっぷる/twipple
2012.08.21 23:11
【雑談@】深読みとはぜんぜん関係ないですが今回の話は『彼と月との距離』と『恋する速度』の後ろに位置します。彼・恋はインハイ前の他校との練習試合の話で今回のはいよいよのインハイ地区予選のお話です/ via ついっぷる/twipple
2012.08.22 13:25
【雑談A】利久から常々、弓を射る時の吉沢は「一切譲らないまるで別人」と評されてますが、吉沢はふだん表には微塵も出しませんが中は相当アツイヒトと思われますので弓にかかわってる時はそーゆー面が出やすいのではないかと。 via ついっぷる/twipple
2012.08.22 13:45
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