Life(未来編)
君色を染め上げて(2017.5)*Night* (1/1)
目次
初めて託生を抱いたとき、気が付いた。
無我夢中で白い肌に口唇を落とし、そこに行き着いたとき、託生は身を捩ってオレから体を隠そうとした。
それは、同じ男として似て非なるもの。達したときオレの腹を濡らすはずのモノが弾けることはなかった。
生まれつきなのだろうが、託生は生殖能力を持っていなかったのだ。
オレとこういう関係にならず普通に女性とつきあえば、子供は望めないだろうことを、オレは瞬時理解したのだ。
「………見たんだろ?」
二度目の夜を誘い、託生の薄い肩を抱いたとき、託生はポツリと呟いて顔を隠すように俯いた。
「個性だろ?」
「でも………」
託生を抱き寄せ、安心させるように口唇を寄せる。
それが、なんだと言うんだ。このさらりとした黒髪も、吸い寄せられるようなしっとりとした肌も、眩しく映りオレを惹き付ける。オレにとっては、託生を形作っている全てが愛おしくて堪らないんだ。
「世の中の人間、みんな同じなら、みんな同じ顔になるじゃないか」
軽口を叩き、託生の不安を取り除いていく。
今まで、人知れず……兄貴だけは知っていた可能性があるが、一人で悩んでいただろう託生に語りかけた。
「オレにとっては託生の一部なんだから、愛おしい以外の感情はないんだ」
「でも、変だろ?」
「どこが?託生の体なんだ。変なところなんて、なにもない」
「ギイ………」
「託生の全てを愛してるんだ。なにも気にする必要はない」
髪をゆっくり梳きながら何度も繰り返し「愛してる」と囁き、俯いている託生の頬に手を当てた。
「このままで、いいの?」
手の動きに逆らうことなく顔を上げた託生が、ポツリと聞く。
「このままの託生を愛してるんだ」
「………うん」
重ねた口唇が震えていた。羞恥と不安で押しつぶされそうな託生を納得させるには、言葉だけじゃ足りない。
細い体を抱きしめ、ゆっくりとベッドに体を倒した。
「ギ…イ………」
「愛してるよ、託生」
「ぼくも………」
オレが、どれだけ託生を愛しているか教えてやるよ。体だけじゃない。葉山託生という存在そのものを、オレは愛してるんだ。お前が、自分の体を愛せなくても、オレは愛してるんだ……。
緊張からかギュッと目を瞑り固くなった託生の口唇に、そっと触れるだけのキスを繰り返す。託生の体から余分な力が抜けるまで啄むようにキスを重ね、おずおずと肩に回った腕を感じてから、一つまた一つと服のボタンを外していった。
託生を覆っているもの全てを剥ぎ取り、自分の上着もベッドの下に放り投げた。
オレが服を脱ぐわずかな時間さえ、心細そうに丸まった託生の頬に口唇を寄せる。触れ合った素肌の暖かさに誘われるように肩に顔をうずめ抱きしめると、託生がホッと溜息を吐いた。
これから大人の時間を過ごすのに 子供のように安心したような表情を浮かべる託生に、苦笑が漏れる。こんな託生を前に耐えがたい欲望を抱いている自分が、非道な人間に思えてくる。
両手で頬を包み視線を合わせ、
「愛してる」
「うん……」
今度こそ深く口づけ、託生の吐息を塞いだ。
前回の切羽詰まった奪うような情交ではなく、お互い熱く求めあえるよう、手と口で託生の快感を導いていく。シンとした空気に乱れる息が融けていく。
オレを呼ぶ託生の声に、今すぐ貪り尽したい欲求が走り抜けるのを、必死に押しとどめていた。
しかし託生の秘部に顔を埋めたとたん、
「待って……待って待って、ギイ……!」
オレの頭を両手で押しやりながら体をずり上がらせ、端に寄せたシーツを胸元に手繰り寄せた。
いきなりの制止に、面食らう。
まだ導入部だから止まれんこともないけど、結構キツいぞ?
憮然と顔を上げると、耳まで赤く染め上げた託生が焦った様子で、オレを見下ろしながら、
「そんなとこ舐めるなんて……普通しないだろ?!」
声を裏返す勢いでクレームをつけた。
はい?口での愛撫は普通だろうが。そういう行為自体に名前がついているのだし。
しかし、託生の批難するような視線に慌てて、
「オーラルは普通だろ?」
まず、そこは否定しなければ。オレが変態のように思われるのは困る。
「SMとか露出とか。あぁいうのは特殊かもしれないけど、口での愛撫は普通だぞ?」
別に他人がどんな性癖を持っていようが別にオレは否定する気はないが。
「え………」
パニックを起こしているらしい託生は、オレの言葉にそのまま固まり、その様子に疑問が頭の中を駆け巡る。
抱かれたことがあるのは、わかっている。託生の告白でも聞いているし、あのときなにをされるか知っていたのだから。
しかし、託生はいったい、どんなSEXを尚人としていたんだ?
気まずい空気が二人の間を流れるのを感じ、とりあえず向かい合ってその場に座る。
SEXは二人で愛し合う行為だ。どちらかが我慢するなど、もってのほか。まだ二回目だからこそ、食い違いがあるのならば解決しなければ。
「託生の普通って、どういうやつだ?」
これを聞いていいのかわからないが、まずはそこをはっきりしようか。
オレの質問に、ウロウロと視線を動かしながら、
「あの………手………」
ボソリと託生が答えた。
うん、手は使うだろうな。手を使わずに愛撫できないわけではないが、しっとりと汗ばんだ肌を撫で上げ熱くなっていくのを確認する作業は、オレにとって欲望に忠実に動いているだけなのだが。
「手以外は?」
「え?」
ポカンと見返す託生に、一つの仮定が脳裏を横切る。
まさかと思うが、
「手、だけ?」
信じられない思いで確認すると、こっくりと託生は頷いた。
そういえば尚人は潔癖症だと言っていたな。自分の快感優先で、託生を思いやることなんて皆無だったろうが、口ですることもなかったんだ。
ということは……。
「じゃあ、キスマークは知ってるか?」
「………言葉は聞いたことあるけど、どんなのか知らない」
案の定、首を振った託生にクラリと眩暈がした。
少し薄くなっている先日の赤い跡と、今つけたばかりの赤い跡を指でつつきながら、
「これ、キスマーク」
「え?」
自分の胸元を覗き込むように見て、
「虫に咬まれたんだと思ってた」
ポツリと呟いた託生に、がっくりと肩を落とす。
オレは害虫かよ………。
もしかして、初めてのSEXであれだけ嫌がったのは、体を隠そうとしただけではなく、その行為そのものが託生にとって信じられない行動だったのかもしれない。
いや、しかし、待てよ。てことはだな、愛撫と言っていいものかわからないが、託生は手で触れられることしか知らないんだ。肌を重ね合って五感で感じ合う恋人とのSEXを託生は知らない。本当のSEXを知らない。
そして、託生の体に痕をつけたのも、オレが初めて………。
過去託生を抱いた尚人が気にならないわけではないが、嬉しさにニヤけてしまう。そうか。そうだったのか。託生はSEXに関して、真っ白なんだ。
「ギイ……?」
よし、こうなりゃ仕切り直しだ。初めてのときは託生の肌に触れられた事実にスパークして、それこそオレも無我夢中だったが、今夜はゆっくりと恋人同士のSEXを教えられる。
シーツを握り締めている託生の手をゆっくりはがし、もう一度体を重ね合わせた。
「ん……」
「オレが、こうやっていたのを、どう思った?」
とびきり甘いキスをして、そのまま頬から首筋にずらした口唇で軽く肌を吸う。
「……よく、わかんない……ギイが……キスしたい……のかなって……」
うん、半分正解。確かに体の隅から隅までキスして託生の全てを知りたいのは当たり前。でも、それ以上に託生を感じさせたい。オレとのSEXを楽しんでもらいたい。愛を交換するのは、とても幸せな行為なのだと託生に知ってもらいたい。
「じゃあ、これは?」
口に含んだままの耳たぶを、軽く噛んでみる。くっと息を飲み、託生の顎が上がった。
「嫌か?」
口唇を噛みしめたまま、ぷるぷると首を横に振る託生には、もうすでに余裕がないように見える。
たったこれだけの愛撫に、ここまで反応するのは、託生が前戯に慣れていないからだ。快感を流すすべを持っていない。
託生の素直な反応に気を良くし、持てる限りのテクニック全てを使い、オレは託生を快感の渦の中に落としていった。
満ち足りた気分で紫煙を吐くオレの腕の中には愛しい託生。
少し湿った髪を梳きながら余韻に浸っていると、
「あのね………」
「うん?」
なにかを思い出したかのように、託生がオレに視線を投げかけた。応えるオレの声も、無意識に甘い。
「露出はなんとなくわかるんだけど、SMってなに?」
しかし、ピロートークにしては突拍子もない質問に思わずむせかけ、慌てて煙草を空き缶に押し付けた。
もしかして託生は偏った知識しか持ち合わせないのではないのだろうか?
よくよく考えれば、つい先日まで人間接触嫌悪症だったんだ。それなりの歳になれば性に対して興味が出て男同士で猥談なんてものもするはずが、片倉以外親しい友人がいなかった託生は、そんな機会に遭遇しなかった。
自分が尚人にされたこと以外、託生はなにも知らない。
「オレ、そんな趣味ないから、知らなくていいよ」
「ふぅん」
オレがそういうことを好まない=これから先することはないと認識したのか、それ以上突っ込むことなく託生は納得した。
言葉責めくらいならとも思うけど、暴力で託生を痛めつけて快感を引き出すなんて、それこそ尚人のようじゃないか。
他人の趣味趣向にどうこう意見を言うつもりはないが、オレには理解できない性癖だ。
「じゃあね」
「うん?」
「あの………ぼくも、した方がいい?」
「なにを?」
「………口で」
「……………っ!」
一瞬なにを言われたのかわからず、ボケっとしてしまったオレの脳が、託生の台詞の意味を理解したとたん、分身が勢いよく勃ちあがった。そういうシーンを咄嗟に浮かべてしまい口元を手で覆う。ヤバ、鼻血出そう。
「ギイ……?」
頬を染めてオレの腕の中から覗き込むように見詰める託生の目が、ものすごいスピードでオレの理性を砕いていく。
そういうことを考えてくれる託生には嬉しさしかないが、とりあえず鎮まれ!鎮まってくれ!まだ託生は本当のSEXを知ったばかりだ。アレもコレもソレも、まだ早すぎる。前回、託生の心の準備を待たずに襲い掛かってしまった分、怖がらせないようにしないと。
「今はいいよ。オレがもっと託生を知りたいし」
託生を安心させるように微笑みを浮かべつつ、声が震えなかったことに安堵する。
これで天然なんだよな。本人、煽っているつもりがないんだから。
しかし、どうもこうも分身が鎮まってくれない。ただでさえ、いつでも託生を求めているのに、こんなこと言われて正気でいろっていうのは、かなり辛い。
これを鎮めるためには……。
「託生、ごめん」
「え?」
「もう一回」
チュッとキスをして体ごと託生の上に乗り上げると、
「えぇっ?!」
心底驚いた表情に赤を散らせた。
………もしかして、一晩に一回が「託生の普通」だったとか?
これからお互い他人とSEXすることはないだろうから、託生とオレの秘め事はおいおい二人で決めていくことにして。
もしかして、託生が人間接触嫌悪症だったのをオレは喜ばないといけないんじゃないのだろうか。年相応の知識を持っていないことに感謝しなければいけないんじゃないのだろうか。
最愛の恋人を自分の色に染め上げるなんて、男として最高じゃないか。
乗じてこれから先、純粋培養されていたらしい託生に不要な知識が入らないよう、目を光らせることにして。
まずは「一晩につき一回」らしい託生の「普通」を塗り替えるべく、全力を尽くそうではないか。
フォルダ整理をしていたら5割程度書けているのを見つけて仕上げてみたら、思ったより長くなってしまったのと、内容が内容だけにブログ放流は無理そうだと思いましたので、こちらにアップしました。
高校生時代ではありますが、設定ファイルですので未来編に。
暇つぶしにでもなれば幸いです。
(2017.5.31)
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