Life(結婚編)
New life(2011.5) (1/1)
目次
「ケチ」
「おい」
「ほんと、心の狭い男よね」
「何とでも言え」
執拗に引き止められて二年。
託生との仲を応援しているのか、はたまた邪魔しているのか、判別がつかないオレの家族にほとほと手を焼き、我慢も限界を越えた。
結婚というこの好機。正々堂々と二人で暮らせるこのチャンスを逃してなるものか!
大体、もうすでに荷物は運び終え、あとはオレ達二人が移動するのみ。しかも、その車に乗り込む直前。今更なにを言ったって、予定は変えられない。
キャンキャン吠える絵利子の文句を聞き流している横から、
「託生さん。嫌になったらいつでも帰ってきていいんですよ」
「そうだよ。我慢なんてする必要はないんだからね」
聞き捨てならない台詞が聞こえ、額に青筋が浮かんだ。
「え…あの……」
困惑した託生の肩を抱き、
「父さん。母さん。オレが託生に、我慢するような生活をさせるはずないでしょ?」
唸るように反論を口にしたとたん、三人揃ってこめかみに手を当て頭を振る。
ここまで揃うと、面白い。
ではなく、あまりに失礼な態度に、青筋が一本増えたような気がした。
「それが信用できれば、どれほどいいことでしょう…」
いや、母さん、そこで涙を拭われても。
「自覚がないのも、困ったものだね」
父さん、そう、大きな溜息を吐かないで下さい。
「何が信用できないかって、ギイのその思い込みの激しさよね」
三人を代表するように、絵利子がズバリ指摘する。
身に覚えがない……とは言えない。
突っ走ったオレに、託生が困惑してすれ違ったことが星の数ほど。いやいや、そのたびに反省して話し合い、二人の絆を結びあわせていたはずだ。
「託生を幸せにすると約束したんです。泣かせるようなことはありえません」
きっぱりと宣言する。
全てを捨ててついて来てくれた託生に、オレができる唯一のこと。誰にも、この役を渡す気はない!
それなのに。
「託生さん、本当にいいのかい?」
「今なら、まだ戻れますよ?」
まだ言うか?!ってか、オレの台詞は、スルーかよ?!
「あの……」
託生がちらりとオレを見上げ、三人に視線を戻した。
「喧嘩するときもあると思います。でも、ぼく、ギイと一緒に生きていくと決めたんです。だから…ギイと結婚させてください」
しっかりとした口調で、託生は深々と頭を下げた。
じーーーーーん。
託生の台詞に感動を覚えたものの、託生、ちょっと間違ってるぞ。
結婚式を挙げるまではと、引き留められていただけで、すでに結婚しているんだが…。
「こんな子と結婚してもらえるだけで、私達はありがたいんですから、託生さん頭を上げてくださいな」
そんな疑問もスルーされ、がっくり肩を落とす。
こんな子……って。
いや、もう、今更どうでもいいさ。崎託生になっているのだから。
「義一。託生さんを泣かせたときには………わかっているだろうね?」
釘を刺した親父の本気の目に、ゾクリと鳥肌が立った。
たぶん、その時は半殺しに……いや、半分じゃない。八割いや九割殺し…有り得そうな想像に身震いをした。
いやいや、それ以前に託生を泣かせるのはベッドの中だけだと決めている。…さすがにそこまでは、乗り込んでこないだろう。
「父さん、母さん、絵利子。今までお世話になりました」
改めて挨拶をすると、家長らしく表情を引き締め、
「うむ。ここは君達の実家だから、いつでも遊びに来なさい」
親父は言葉を締めた。
「はい」
託生を車に乗せ窓を開ける。
家族、使用人、総出の見送りに頭を下げ、クラクションを一つ鳴らして走りだした。
バックミラーに写る屋敷が小さくなり、ホッと安堵の溜息を吐く。
やっと新婚生活に入れる。ギリギリまで引き留められるとは思わなかった。
助手席に乗る託生が、一言も発せず大人しく座っているのが気になり、
「寂しいか?」
問い掛ける。
託生自身、この引っ越しには疑問を持っていたからな。
「……うん、少し。でも、ギイと一緒だから」
「だから?」
続きを促すと、
「……嬉しいかなって」
オレから顔を隠すように、ぷいっと窓の外に視線を向けたものの、託生、隠しきれてないぞ。耳が赤い。
可愛い託生の仕種に、抱きしめたくなるのを制し、代わりに右手で託生の左手をそっと握り、
「愛してるよ」
今、一番伝えたい想いを囁いた。
キュッと握り返される手。
二人の甘い生活は、始まったばかりだ。
ブログより転載
(2011.5.27)
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