Life(婚約編)
バージンロードの裏事情(2011.5) (1/1)
目次
「式の招待客なんですが、本当に祝ってくれる人間だけにしたいんです」
「…とは?」
「祠堂の友人とか島岡とか使用人とか」
親父やオレの立場からすると、本来は婚約発表から始まり、盛大に式と披露宴を行わなければならない。だが、まだ女性として慣れていない託生に、そこまで求めるのは無理だ。
それに、オレだって口先だけの祝辞など聞きたくもないし、見世物になるつもりもない。
「わかった。わざわざ隠す必要もないが、知らせる義務もないからな。君に任せるよ」
「ありがとうございます」
ホッと溜息が漏れる。
一つクリアーだ。
「それから…」
話を続けようとした時、ノックの音が部屋に響いた。
「どうぞ」
親父が声をかけると、
「託生さんが、お父様にお願いしたい事があるんですって」
絵利子が顔を覗かせた。
「託生が?」
オレをすっ飛ばして、親父に直接?
「お話し中にすみません」
申し訳なさそうな顔をした託生が背後から現れ会釈した。
「いやいや、たいした話はしていないから。それより託生さんのお願いとはなにかな?」
親父のやつ、初めての託生のお願いに、目尻が下がっていやがる。
って、オレをすっ飛ばしてのお願いってのはなんだよ。事と次第では、対策を立てないといけないからな。
そうこう考えているうちに、何故か絵利子がオレの隣に座り、託生がその向こうに座った。
「おい…」
「なによ。託生さんが話できないじゃないの」
「………」
まぁ、いい。あとで、じっくり言い聞かせてやる。
ニコニコと託生の話を待っている親父を横目に、コーヒーを一口飲んだその時、
「あの、バージンロードを一緒に歩いていただけませんか?」
託生の爆弾発言に吹き出した。
「ブーーーーーッ!!」
「汚いわね」
冷静に突っ込む絵利子を睨みつけるものの、ゲホゲホとむせていては迫力も威厳もない。
それより、ちょっと待て!
バージンロードは、オレと二人で歩く予定にしてたのに、なに先走ってるんだ?!
「それは、光栄な役だね。喜んでエスコートさせていただくよ」
親父の返事に、満面の笑顔を浮かべた託生は、
「ありがとうございます」
深く頭を下げた。
「待って…」
ください。異議あり…と続けようとして、
「てーーーーーっ!」
容赦なくヒールが右足に刺さる。
(なにするんだ、絵利子?!)
(託生さんが悩んで悩んで、私に相談に来たんですからね。邪魔しないで)
(なにが邪魔だ!バージンロードは…)
「あら、みんな揃って、どうしたのかしら?」
「母さん、いいところに。託生さんに、バージンロードを一緒に歩いてほしいと頼まれてね」
「まぁ、それは素敵なお話ですこと」
「だ…」
から、バージンロードはオレと…と続けようとして、
「だーーーーーっ!!」
今度は横を歩きざま、お袋に左足を踏まれた。
何事もなかったかのように、お袋は親父の隣に座り、
「でも、貴方。女性から申し込ませては、託生さんに失礼ですわ」
苦言を言う。
「それは、そうだ!では、託生さん」
「は…はいっ」
託生の右手を取り立ち上がらせ、
「バージンロードのエスコートを、させていただけませんか?」
手の甲に軽くキスをし、スマートにエスコートを申し込む。
オレの託生だ!なに勝手に申し込んでるんだ?!
って、おい、託生!何赤くなってんだ?!
今度こそと立ち上がりかけた、その時。
「普通の家族を教えたいと言ったのは、ギイよね?」
絵利子の言葉に、ギクリとした。
託生が実の父親と歩けないのは、オレに責任がある。託生は許してくれたが、それとこれとは別だ。
絵利子に相談したのも、実の娘である絵利子に許可を貰いたかったからかもしれない。
「反対しないわよね?」
「…できません」
オレの失態のフォローを、託生に気付かせず遂行させられたりしたら、反対なんてできやしない。
なにより、託生があんなに喜んでいるのだから。
「リハーサルとかは、するのかね?」
「それは、わからないのですが、ドレスを着るのが初めてなので、何度か練習しないと…」
「じゃあ、練習には私が付き合おう。本番さながら練習すれば、上がらないからね」
「ありがとうございます」
本番さながら?
って、まさか?!
「託生、ドレスを着るのか?!」
「着ないと練習にならないよ」
何を今更と呆れ顔の託生に、
「練習は、オレが付き合う!」
きっぱり宣言したのにもかかわらず、
「君は、他にやる事があるだろう。会議とか会議とか会議とか」
口許を歪ませた親父にニヤリと笑われた。
前言撤回!
父親がどうこうよりも、オレより先にドレスを見たいだけだろうが!!
「式まで我慢したまえ。はっはっはっ」
親父にまで先を越されるとは……。
何が何でも、式より先に見てやる!
ブログより転載
(2011.5.5)
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