ガンダムSEED
いちごみるく(2003.11) (1/1)
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フラガは困っていた。
手の中にある、イチゴミルクのキャンディーひとつ。
先程、食堂で「疲れたときには、甘いものがいいですよ♪」などと言われ、ミリアリアが押し付けていったのだ。
しかし、フラガは甘いものが大の苦手であった。
好意を無にしたくはないが、これを舐めると数時間胃の調子が可笑しくなる事は必至である。
「お嬢ちゃんには悪いが、誰かにあげちまおう」
そう言いながら、メビウス・ゼロの整備も兼ねて、格納庫へ向かった。
「お〜い、マードック」
「なんすか、大尉?」
「お前さぁ、甘いもの食べない?」
整備の手を止めて振り返ったマードックに近づき、手の中の可愛らしいキャンディーを見せる。
この人にキャンディーなんて、何と似合わない事かと思いつつ、一体どうしたのだ?と目で伺う。
「いや、お嬢ちゃんに貰ってさぁ。でも、俺、甘いもの苦手なんだよねぇ」
「それだったら、坊主にやったらいいでしょうが」
なるほど。
聞いた事はないが、まだまだお子様のキラなら、甘いものが好きかもしれない。
「ほれ。いいタイミングで帰ってきましたぜ」
無理を強いて意に添わぬ戦いに明け暮れるキラは、疲れを顔に滲ませて、ストライクに向かう所だった。
「おい、坊主」
手を振り大声で自分を呼ぶフラガの声に、キラはぼんやりと俯いていた顔をあげ、声の主の元に歩いてきた。
「なんですか、大尉」
条件反射のようにキツイ瞳で睨み返すキラに苦笑し、「手を出せ」と催促する。
不審な顔をし、でも素直に手を出したキラの手の平に、フラガはちょこんとイチゴミルクのキャンディーの乗せた。
「………………」
天使が横切った。
と、同時にフラガは思い出す。
この子供は、子供扱いすると怒り出すのだ。それも生半可な状態ではなく、相手が上司であれども、容赦はない。
「あー、や、ブリッジのお嬢ちゃんに貰ったんだけど、俺、甘いもの苦手でさぁ。お前が貰ってくれると、すご〜く助かるんだけど」
キャンディーを見詰めたまま、何も発しないキラに、しどろもどろに言い訳をする自分が少々情けない気もするが、今更どうしようもない。
「えっと、嫌いだったか?」
その声に、ハッとして顔をあげ、
「ありがとうございます」
キラは今まで見たことがないような可愛らしい満開の笑顔で、お礼を言った。
フラガはもちろん、側に居たマードックまでもが絶句する。
「食べていいですか?」
「あ………あぁ」
キラは、両手で包み紙の端を引っ張り、出てきた三角形のピンクのキャンディーを口に放り込み、味わうように転がすと、幸せそうな表情で
「美味しい………」
と、呟いた。
いつもの眉間に皺を寄せ睨みつける瞳とは雲泥の、余りにも可愛らしい表情に驚き固まっていたフラガは、
「そ………それは、よかった」
おざなりに返事を返す。
「じゃあ、ストライクの整備してきます。ご馳走様でした」
礼儀正しく頭を下げ、ストライクに向かうキラの後姿を、呆けたように見詰めるフラガに、
「用事がすんだのでしたら、ゼロ点検してもらいたいんですがね」
マードックが呆れながら声を掛けた。
「そ………そうだったな」
いつもなら、なにやら用事を口にして格納庫を逃げ出すフラガだが、余りに驚いた為か素直にゼロに向かう。
キラが離れるときに漂った、甘い甘い香り。
口に入れた瞬間に見えた、赤い舌。
「俺、ヤバイかも」
これからの行く末に一抹の不安を抱きつつ、ゼロに潜り込むフラガであった。
いいよね〜、若者はぁ!(笑)
あの年の差が堪らない魅力です。
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