休日 (2001.11)

「う…ん……」
 優しいギイの指が体を滑る。
「気持ちいいか、託生?」
「う……うん」
 囁きが風になって耳に届き、指先が次の場所を探す。
「ここは?」
「…い……ぃ……」
「ばかだなぁ。言ってくれればいいのに。こんなにカチカチになって」
「だって……」
 苦笑まじりの声に、とりあえず反論を口にする。
「我慢は体によくないぞ」
「でも…あっ、痛っ!」
 ギイの指先に、ぐっと力が入り、ぼくの体は緊張に硬くなった。
「ほら、力抜いて」
 そんなこと言われても、
「あ……ん、できないよ、ギイ」
 硬くなった体は意志に逆らって、ギイを受け入れてくれない。
「託生、ゆっくり息、吐いてごらん」
「は…ぁ……」
 言われたとおり息を吐くと、少し痛みが薄れた。
「いい子だな」
 ふふっと笑ったギイの声が、背中に響いた。
 目を閉じて、ギイの指の動きを追う。その優しい動きに体を委ねると、ふわりと体が浮くような感覚がやってくる。
「だいぶ、ほぐれてきたぞ」
 ギイの声にハッとして、目を開けた。
「うん、ありがとう、ギイ」
 ぼくは起き上がってギイに向き直り、ペコリとお礼を言う。
「しかしバイオリニストも大変だな。肩凝りが持病だもんな」
「うん、首回すのもしんどかったんだ」
 顎と肩で支える演奏姿勢は、かなり負担がかかる。
 あまりにも首をこきこきと鳴らしていた為、不思議に思ったギイがマッサージ師をかって出てくれたのだ。
「疲れてるのに、ごめんね」
「このくらい、どうってことないさ」
 ギイはチュッと口唇にキスを弾ませて、ニコリと笑った。
「さてと、体も軽くなったことだし、買い物がてらドライブでも行くか?」
「あ、賛成!」
「よし。オレ車のキー取ってくるから、コート用意しててくれよな」
 ギイは言い置いて、部屋を出て行った。
 二人分のコートをクローゼットから取り出して、ギイの待つ玄関へ足を向ける。
 外はデートにはもってこいの晴天だ。
 これが休日の過ごし方。
 いつもエッチばかりしてるわけじゃ、ないんだよ。
 
 
 
SSを書くとき、私の場合よく台詞から入って書いてます。で、この話が典型。
もともと友人の携帯に台詞だけ送ったのが、始まりです(笑)
ほら、下にスクロールしていくと、ドキドキするでしょ?
こうやって友人を驚かすのが、私の楽しみだったりします(迷惑なヤツだ…)
(2002.9.4)
 
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