I can't control it(2007.8)*Night*
章三を仲介に託生をゼロ番に誘った夜は、触れ合う嬉しさと期待と、ほんの少しの背徳感をまとい、皆が寝静まる時を待つ。
消灯を過ぎて数分たった頃、控えめに………しかし、その音さえも大切な物だというような、ゆっくりと叩かれるノックに、オレの欲望は一気に脈だった。 心の内を見せぬよう、自然な微笑みを浮かべドアを開けたオレの胸に、 「会いたかった」 と、甘えてみせる託生。 触れたい。 この細い体を組み敷いて、オレの印で埋め尽くしたい。 オレだけしか考えられぬよう、喘がせて、鳴かせて、楔を打ち込みたい。 狂気に渦巻く欲望を胸の奥に閉じ込め、託生の唇にバードキスを落としてソファへと誘った。 久しぶりの逢瀬に「嬉しい」と無邪気な子供のように喜んでいる託生を見ると、自分が犯罪者になったような気分になる。 しかし透明な託生がオレの色をまとい、妖しく染まっていく過程は、何度見ても見飽きない麻薬のようなものだ。 甘い痺れにも似た感覚が蘇ったとき、オレの喉は砂漠でオアシスを見つけた旅人のように、ゴクリとなった。 と同時に、スウィーツと同じ甘い香りのはずのバニラマカダミアが、まるで催淫剤のように部屋に溶け込み、思考を乱していく。 「託生………」 少し掠れた声色に、託生の肩がピクリと震えた。 空間が淀む。 オレの目に欲情の色を見た託生は、ゆっくりを瞳を閉じ唇を待った。 去年は、毎日のように肌を重ね、託生の体には消える暇がないくらい付けた赤い印。今では、傷一つない白い肌を毎回目にするようになった。 その肌を見るたび、オレの心は独占欲という炎に火が灯される。 託生はオレの物だと。 それこそタトゥーのように消えぬ印を刻み込み、皆にも託生自身にも知らしめたい欲望にさいなまれる。 今日こそは優しく交じりあいたいと、心に決めた誓いすらバラバラと音を立てて崩れ、本能のまま飢えた吸血鬼のように喉元に噛み付いた。 ひとつ、ふたつ………。 赤い印が増えていく。 サディスティックな欲望は底なし沼のように深く、託生の目尻に涙の粒が浮かんでも攻め立てる愛撫に容赦はない。 「あ………やっ、もう………ギイ…………!」 絶え間なく零れる音色と手を濡らす託生の愛液に、興奮しきった半身がオレの意思を無視して「一つになりたい」と限界を訴える。 託生が声なき声をあげ、白い液体を飛び散らせた。 手足を力なく伸ばし自分の粘液に汚れた託生は、まるでオレの為に捧げられた貢物のようで、瞬きもできないくらい美しく、オレの呼吸は自然に浅くなる。 「愛してる………託生………たくみ…………」 乾いてしまった唇を潤すようにキスを重ね、身を深く沈めた。 激しすぎる愛の時間に絶えられず、託生は深い眠りについていた。 託生を愛と優しさに包み込み、幸せな笑顔を守りたい。 しかし、ひとたび姿を見ると、独占欲と嫉妬の嵐が渦巻き、平常心が保てなくなる。 こんなオレでも愛してくれるか? 見捨てないでいてくれるか? 託生、愛しているんだ。 Nightと言っていいのか、どうなのか。 ものすごく悩んでしまった。 えっと、独占欲バリバリのギイをコンセプトに書いてみました。 が、ギイが小説の中の人間だからいいけれど、現実にこのような人がいたら危ないと思う。 金持ちで美形で………とかそういうのを除いて、ストーカーで、独占欲丸出しで、嫉妬心は人の数倍。 犯罪一歩手前?(笑) こんなギイと付き合える託生君は、すばらしい人物だと思います。 あっと、一応「I can't control it」は、「コントロールできない」という意味で。 (2007.8.5) |