パジャマ de おじゃま(2010.9)

 真夜中のゼロ番。
「なぁ、託生、この頃なんでTシャツなんだ?」
 ソファでギイの入れてくれたカフェ・オ・レを飲んでいると、実に不満そうにギイが言った。
「Tシャツが、なに?」
「いや、前はパジャマで来ていただろ?」
「………あぁ、やっぱり廊下に出るのに、パジャマじゃヤバイかなって思って。三洲君もTシャツかスウェットだよ?」
 だいたい誰かに会ったときに、パジャマじゃ恥ずかしいじゃないか。
 廊下は公共のものなんだし、それこそぼくが3階にいること自体言い訳しにくいものだし、Tシャツくらいだったら「何かの用事で来てました」が通じるかもしれない………と思うのだ。
 しかし、
「パジャマの上に、何か羽織ればいいじゃん」
「パーカーもカーディガンも、全部実家に送っちゃったよ」
「じゃ、オレの貸すから」
「別にいいよ。面倒臭い」
 一体、Tシャツのどこが気に入らないんだろう。
 パジャマもTシャツも、四六時中一緒にいた2年の時に見慣れていたものじゃないか。
 ギイは、わけがわからないと書いたぼくの顔を見て、これ見よがしに盛大な溜息を付いた。
「相変わらず、男心がわからんやつだな」
「………なんだよ、それ」
 Tシャツの、どこが悪い?。
「パジャマのボタンを一つ一つ外すのが、男のロマンだろうが!」
「………は?」
 ボタン?ロマン?
「キスを落としながら上から順番にボタンを外して託生の肌を愛でる。これを男のロマンと言わずして何と言う!」
 拳を握り締めて力説するギイに、怒りを通り越して呆れ果て、
「………わかった。帰る」
 ぼくはソファを立った。
「ちょっと待った、託生!」
 ドアに向かうぼくを、ギイは慌てて背後から抱きしめる。
「パジャマがいいんだろ?Tシャツが嫌なんだろ?」
「ごめん。オレが悪かった。帰らないでくれ。頼む、託生」
 抱きしめる腕の強さと必死の謝罪に、そう言えばギイってエッチ事に関しては結構単純だったなと思い出した。
「託生の立場をきちんと考えてなかったオレが悪い。ごめん」
「………反省してる?」
「してる。してます」
「どのくらい?」
 ぼくの声色からもう怒っていないと判断したギイは、
「このくらい」
 少し腕を緩めて屈むようにキスをした。
「ぼくが着る服に文句を言わない」
「はい。ごめんなさい」
「今度言ったら、ゼロ番に来ないから」
「絶対言わない」
 ギイの大きな手が、Tシャツの裾からゆっくりと這い上がってくる。
「ここじゃ、ダメ」
 ピシリと言うと、ギイはぼくを抱き上げ大股で部屋を横切りベッドに向かった。
 唇にギイの吐息を感じながら、たまにはパジャマを着てもいいかなと思ったのはギイには内緒だよ。



朝、お返事を書いていたら、なんか変な方向に思考がロックオンされまして(汗)
いや、全然関係のないお話のお返事だったんですけど。
そうしたら、ギイタクが動き出しまして、こうなってしまいました。
託生くんが、ちょっと強気?
おもちゃ箱行きかなぁと思いつつ、3年なのでこちらに。
(2010.9.24)
会話カテゴリーの会話3がおまけです。
(2010.10.19)
 
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