remenber again (2002.1)*Night*

 マンハッタンにあるギイの自宅。
 帰国したとたん風邪をひき、ベッドで休んでいたギイの元に、恵利子の飼い猫が忍び込んできた。
「おい、風邪が移るぞ」
 枕元に上がってきた猫に、掠れた声で注意する。
「ミャー」
 言われた意味がわからず、猫は甘えた仕草でギイの頬をペロリと嘗めた。
「しょうがないな」
 部屋に備え付けの冷蔵庫からミルクを取り出し床に置くと、猫は音もなく駆け寄り、おいしそうに飲み始めた。
 ぺろり、またぺろり。猫の赤い舌が見え隠れする様を、じっと見詰めているうち、知らず知らず舌嘗めずりしていたらしい。
 ハッと気付き苦笑する。
「託生の口唇を思い出しちまった」
 赤く誘うような口唇。そっと触れれば閉じた瞼がかすかに震え、柔らかくオレを包み込む。あの甘い舌を捕え、きつく吸い上げると、苦しそうに眉間に皺を寄せ、よりいっそうオレを煽る。そして………キスだけでは想いが伝えきれなくて、二人快楽の海に身を投じてしまう。
「重症だな、オレ」
 託生との時間を思い出して、すっかり立ち上がってしまった自分自身に、もう一度ベッドに横たわり手を添えた。
「託生………」
 愛しい恋人の名前を呼び、切なげな表情を浮かべた託生を思い出しながら、瞳を閉じ右手をゆっくり上下にスライドさせる。
 託生の匂い。喘ぐ声。ほっそりした首筋。赤く尖った乳首。そしてオレを熱く受け入れる禁断の蕾。
 託生の露な姿を思い描くたび、スピードが速まっていく。背筋に快感が走り、ギイの息遣いが荒く激しいものに変化した。
「託生………託生…………っ!!」
 ギイの精が迸る。
 絶頂を向かえ、心地よい疲労感に身を委ねようとした時、枕元の電話が、ふいに鳴った。
「義一さん、御加減はいかがですか?」
 乱れた息を整えながら、
「島岡。たのみがある」
「何でしょうか?」
 一瞬間を置き、
「ティッシュ持ってきてくれ」
 続けたギイに、
「仕方ないですねー。義一さんは」
 察しのいい島岡は、苦笑を漏らし、
「5箱程お持ちしますよ。それだけじゃ足りませんか?」
「足りる………と思う」
 真面目に答えたギイに笑いを堪え、
「では、のちほど」
 島岡は電話を切った。
 ゆっくりと受話器を戻し、
「足りるのかね」
 ぼそりとつぶやいたギイは、体力あり余る青少年であった。
 
Fin.
 
 
ここで、キーワード。
 
「ニューヨークの自宅」
「絵利子の飼い猫」
「風邪気味」
「冷蔵庫」
「『島岡、頼みがある』」
「『仕方ないですねー。義一さんは』」
 
はい、このキーワードを使って、エロにしてみましょう(爆)
というお話が回ってきて「じゃあ、こんなのは?」と、お遊びで書いたのが、これであったりします。
それが『星屑の停留所』の管理人様に回り、投稿が決まったんですね。
こんなアホ話でいいのだろうかと、当時は思ったものです。
 
PAGE TOP ▲