You are my sunshine(2011.1)

「葉山」
 声と共に机に滑らされたメモ。
 ギイ………。
 とたん、ぼくの頬が熱くなる。
 かれこれ二週間も、二人きりで会うことができなかったのだ。
「ありがとう、赤池君」
 そのままどっかりと前の席に座った章三に礼を言うと、力なく片手を挙げた。
「赤池君、なんだか疲れているように見えるけど………」
 言うなり、章三はジロリとぼくを睨んだ。
 うわ、目が据わってる。なにか、ぼく失敗したっけ。
「………葉山」
「はい?!」
「ヤツは生徒全員が学院生活を円滑に送るために、必要不可欠な能力を持っているんだ」
「ギイのこと?」
「しかし、その能力が使えないときがある」
「それは………」
「太陽が足りないからエネルギー不足だ、だからよろしく。あいつはソーラー発電か?!」
「えっと、すみません」
 ギイに代わって、ぼくが謝ります。
 反射的に謝って、でも章三のセリフに「はて?」と考える。太陽?ソーラー発電?いったい、なんの話?
「あいつが使えないとこっちが困ることを承知の上で、言ってきやがる。まったくもって確信犯だ。だいたいな、ただの友人なら部屋を訪ねるくらい普通にできるだろうが」
 そうは言われましても、それがなかなか。
「葉山!」
「はい!」
「ビタミンだとか太陽だとか、そんなこと僕には関係ない。エネルギー不足なら自分で動けとヤツに言っておけ」
「わかりました」
 ギイのことで怒られるのは腑に落ちないけれど、章三に迷惑をかけているのはぼくも一緒なので、おとなしく拝聴しておく。
「それから」
 キーンコーンカーンコーン♪
 直後に鳴ったチャイムが、救いの鐘に聞こえたのは言うまでもない。


「ギイ、赤池君怒ってたよ」
「怒らせるようなこと言ったつもりはないけどな」
「うそばっかり」
 ギイの腕の中。髪を梳く優しい指に、うっとりと目を閉じる。その気持ちよさが、ぼくの体の中に残る嵐の余韻を呼び覚ましそうで、
「そういえば、ソーラー発電ってなに?」
 疑問に思ったことを聞いてみた。
「なにって、太陽光をソーラーパネルで吸収して」
「そのくらいは、知ってるよ。赤池君が『あいつはソーラー発電か!』って怒ってたから」
「章三のやつ」
 クスクス笑う吐息が頬にかかって、くすぐったい。
「託生はオレの太陽だってことだよ」
「なに、それ?」
 意図を持った指が、髪から背中を滑り落ちてくる。
「そんなことより、託生。もう一回、充電させて?」
 口唇に直接注ぎ込まれた言葉を飲み込んで、まだ汗ばむギイの背中に腕を廻した。
 白く霞む意識の中で、ぼんやりと思う。
 ぼくが君の太陽なら、君はぼくの空だよ。
 朝も昼も夜も、見上げればいつでも広がる包み込むような空。




ツイッターでつぶやきを見かけた方には、「あぁ、あれか」と思われると思うのですが。
ギイのエネルギー=託生くん=太陽=ソーラー発電。
連想ゲームのような思考で繋がって、結局こういう話になりました。
ものっすごく短いですけど、まぁ、ひとつの脳内妄想ってことで(^-^)ゝ
(2011.1.12)
 
PAGE TOP ▲