実は困っていたんです(2007.8)

「穏やかな時間の中で」の『Call Me』のその後です。
 
 
 託生とあっち向いてホイをした後、ウインクなんぞを決めてバスルームのドアを開けたのだが、実はとんでもなく困っていた。
 
 昨晩はたまたま先に託生が風呂を使った。
 しかし、風呂から上がった託生があんなに艶っぽく変化するとは、思いもしなかったのだ。
 立ち上る石鹸の香りに、しっとりと濡れた黒髪。パジャマの襟元から見える、ピンク色に染まったきめ細やかな肌。
 生唾物の色っぽさに、思わず笹かまを喉に詰まらせそうになってしまった。
 その後、バスルームで空しく処理したのは、仕方なかろう。
 ………と、思い出したとたん、これだ。
 本人の意思を無視して暴走する下半身に、溜息を吐きつつ、
「やっぱりヤバイ」
 何か適当な理由を考えて、託生を先に風呂に入れなければ、オレは2回も風呂に入るはめになる。
 ………これしかないな。
「あーー!!」
 わざと大声を出しガタンとドアを開けた。
 もちろん下半身はシャツで隠してある。
「ギイ?」
「章三に書類渡すの忘れてた」
 そのまま託生に背中を向け、机から適当な紙を数枚取り出し、
「ちょっと遅くなるかもしれないから、風呂が冷めないうちに入れよ」
「そ………そう?」
 オレの言葉に何の疑いもなく、託生はタンスから着替えを取り出し、
「じゃ、お先」
 バスルームに入っていった。
 色っぽいのは託生のせいではないけれど、無自覚な所がオレ的に恨めしい。
「いつまで誤魔化されてくれるかね」
 ドア越しに聞こえる水音を聞きながら、深い溜息を吐いた。
 
 
2ヶ月の禁欲生活の間、ギイはいろいろと我慢したんだろうなぁと思っていたら、こんなになりました。
健康優良児ですからねぇ。
悶々とした毎日を送っていたことでしょう。
(2007.8.10)

《追記》
『困っていたんです』をカテゴリー分けしました。
(2010.9.29)
 
PAGE TOP ▲