まだまだ困っていたんです(2007.9)

「実は困っていたんです」の続きです。
 
 
 
 今日もまた、風呂上りの託生の色っぽさにノックアウトされ、着替えで下半身を隠しながらバスルームのドアを開けた。
 どうして、主人のオレの言うことを聞いてくれないんだ!
 分身のあまりの節操のなさに、我ながら情けなくなる。
 体と髪を洗い、自己主張をする下半身の始末をして、オレは浴槽に浸かった。
「恋人になって2日目か」
 正確に言うと26時間。
 たった22日前の1年生の終業式の時は、絶望的な片思いに打ちのめされていたのだが、同室になり(託生のトラブルの仲介にはオレが必要と認識させた結果)、託生と名前を呼べ(呼びたかったが為に勝手に呼んだのだが)、告白ができ(2人きりの暗闇の空間とオレの我慢がきかなかった結果)、恋人になった(奇跡のレインボー・ボイスよ、ありがとう!)、人生最高の26時間だ。
 託生を腕に抱け、「好きだよ」と言ってもらえた、この幸せ。
 オレの恋人は葉山託生だと。
 葉山託生の恋人はオレだと。
「もう、誰彼かまわず、言ってしまいたい!」
 気持ち的には、ジタバタとやりたいのだが、風呂の中でやるのはバシャバシャと五月蝿いだけだ。
 それに、やはり託生には格好いいところを見せたいじゃないか。
 恋する男は健気なのだ。
 オレは深呼吸して気持ちを落ち着け、風呂をあがった。
 
 
 少しはオレに慣れてくれたのか、バスルームを出た時に、託生は自分のベッドで横になりながら本を読んでいた。
「ギイって、お風呂ゆっくりなんだね」
 バスルームから出てきたオレを、意外そうに、不思議そうに見ながら、疑問を投げかけた。
 ギクッ。
 内心の焦りを隠して、ポーカーフェイスで繕い、少し驚いた風を装う。
「オレ、そんなに長いか?」
「あ、そういう意味じゃなくって、アメリカってシャワーのイメージがあるから、早いのかなって思ってた」
 あぁ、なるほど。
「汗かいたときなんかは、手早くシャワーを浴びるときがあるが、やっぱり風呂に浸かって体を伸ばしたいな」
「そうなんだ。疲れも取れるしね」
 オレの言葉に、託生は素直に頷いているが、時間がかかるのは別件の処理しているからであって………。
 と、気付かない託生は、
「じゃあ、温泉も好きなんだね」
 断言するように、問いかけた。
「そりゃ、もちろん!一度、温泉巡りしてみたいんだがな」
「温泉巡りかぁ。ぼくは露天風呂が好きかな。熱いけど風が涼しくて、気持ちいいよね」
 露天風呂………。
 潮騒の聞こえる露天風呂に、肌をピンクに染めた託生………。
 うっとりとその風景を思い浮かべ………ズックン!
 ヤバッ!
「ギイ、どうしたの?」
「いや、歯を磨くの忘れてた」
 慌てて洗面所のドアを開け逃げ込んだ。
 オレ、いつまで理性持つのだろうか。
 下半身を宥めつつ、深い深い溜息を吐いた。
 
 
 
えぇっと本当は「困ったおもちゃ箱」に入れたかったんですけど(ギイのキャラ壊れてるし;)、「実は困っていたんです」の続編に当たるんで、こちらにアップしてみました。
でも、ギイって健全な青少年だし、天然で可愛い託生君を前にあたふたしてたと思うんですよ。
………にしては、壊れすぎました?(汗)
(2007.9.21)

《追記》
『困っていたんです』をカテゴリー分けしました。
(2010.9.29)
 
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