Pillow Talk(2010.10)

 託生が暮らすワンルーム。
 一ヶ月ぶりに恋人の時間を堪能し、狭いシングルベッドの上で託生を腕に閉じ込めピロートークを楽しむ。
「託生、髪切った?」
「あぁ、一週間前くらいにね。かなり伸びてたし」
「ふぅん」
 言いながら、託生の少し汗ばんだ髪を指に絡ませると、くすぐったそうに首を傾げた。柔らかな頬に、そのままキス。
 猫が喉を鳴らすように、気持ちよさそうな表情でオレに身を任せていた託生が、ふと目を開けた。
「そう言えば、『髪、染めませんか?』って言われた」
「髪を?」
「うん。『男性が染められるのは、就活までと白髪が生えたときくらいですよ』って」
 その情景を思い出しているのか、託生はクスクスと笑いながら楽しそうに報告するが、オレは全然面白くない。
 くそっ!!
 接客とはわかっているが、託生のこの髪に触って、尚且つ会話を楽しんだだと?
 今度散髪に行くときは、付いて行って脅しを掛けてやろうかと頭をフル回転させる。
 そんな物騒な事を考えているとは露知らず、
「そのときは断ったんだけどね、似合うと思う?」
 託生は上目遣いにオレを見上げた。
 ………どうしてこう無自覚に可愛いのだろうか。
 離れている間に、どんどんレベルアップしているような気がするのだが、それはオレの気のせいなのか?
 オレの複雑な心中に気付かず、託生は「ギイ?」と応えを促した。
 茶髪の託生ねぇと、思い浮かべてみる。
 意志の強そうな黒髪もいいが、託生なら茶髪でも似合うだろうな。
 しかし、今より柔らかな雰囲気になるだろうから……ダメだ!余計な虫がつきそうだ。
 返事を待つ託生に、
「今のままで十分だと思うけど……託生は染めたいのか?」
 頭から反対するわけにもいかず、一応遠回しに「反対だ」と言ってはみたけれど、どこまで託生に伝わるのか。
 託生は「うーん」としばし考え、
「……ギイと同じ色なら、いいかなと思うけど」
 お揃いみたいだし。
 と、頬を染めて付け加えられたら。
「やっぱり、託生、可愛すぎ!!」
「ちょっ……ギイ!」
 慌てふためく託生を力いっぱい抱きしめ、口唇を重ねる。
 可愛すぎて、可愛すぎて、このままアメリカまで攫って帰りたくなるくらい、可愛い。
「託生、浮気するなよ」
「もう、どうして、そんな心配するかな?」
 腑に落ちないと顔に書いた託生に苦笑いし、
「オレ、黒髪の方が好き」
 託生の額に前髪ごとキスを落とした。
 頼むから、オレのライバルを増やしてくれるなよ、託生。離れている分、いつ変な虫がつくかもとハラハラしてるんだぞ。
 オレの心が聞こえたのか、託生はクスリと笑い、
「うん、染めない」
 素直にオレの注文に頷いた。
「それよりも、託生」
 オレ、もう一度欲しいな。
 勃ちあがった半身を託生のモノにこすりつけ、耳朶を口唇で挟みながら強請ると、託生は顔を赤く染め「もう一回だけなら……」と目を伏せた。
 可愛い顔から艶っぽい顔に変化する瞬間。
 次に会う時までの為にと目に焼きつけ、託生と共にベッドに深く沈んだ。



イラスト集を見ていて、託生くんって黒髪というより茶髪だよなぁ(イラストなんだから当たり前;)というアホな発想から、こうなりました。
遠距離の二人を書くのは、もしかして始めてかも……。
(2010.10.13)
 
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