約束〜under〜 (2002.4)*Night*

 朝の光の中で抱かれるなんて、昔のぼくには到底考えられない事だけど……。
 一週間ぶりに帰ってきたギイに求められ、ぼくたちは白いシーツの上で縺れあっている。
 いつもは薄闇の中たどるギイの肩が、やけに白くはっきりと映り、ギイがここにいるとぼくに教えてくれる。
 全身にキスを落とし、両手でぼくの体を撫で愛撫するギイに愛しさが込み上げ、ぼくの体が泡立っていく。
 うっとりと名前を呼ぶと、口唇にギイが戻ってきた。
「ギ……イ………」
「託生……オレが欲しかった?」
 そう、ずっとギイに抱かれたかった。
 一人で寝るのは寂しくて……。ギイの匂いが残るベッドがぼくを包み込んで、体の芯が熱く疼いてどうにかなりそうだった。
「欲しかった?」
 答えを言わなければ、してやらないぞとばかりに、ぼくの入り口をゆっくり指でなぞる。知らずに揺れてしまう腰。触れ合う二人の熱いモノが、背筋に電流が走るほどの快感を呼び覚ます。
「や……だ………」
「はっきり言えよ、託生」
 いつもなら笑いを含む声も、荒い息の下、少し怒っているように聞こえた。
 入り口を彷徨っていたギイの指が、ぼくを煽るようにほんの少し中に入ってくる。
 もっと……!
 ぼくの体が悲鳴を上げる。
 早く、満たされたい。ギイ……!
 耳朶を含んでいた口唇が戻り、深く舌が忍び込む。
「は……ぁ………」
 クチュと唾液に濡れた口唇から、甘い蜜が零れ落ちる。
 それを追って離れたギイの口唇が恋しくて、ギイの頬に手を当てキスを強請った。
「素直じゃない託生には、キスしてあげないよ」
「お願い……」
 両腕でギイの頭を引き寄せ、口唇を重ねる。自分から差し入れギイの甘い舌を無我夢中で吸い上げた。
「オレが、欲しかった?」
 舌を絡めたままギイが問い掛ける。
 ずっとずっとギイが欲しかった。でも、口に出すのは恥かしくて、ギイの台詞を奪うように深く口唇を合わせ、腰を押し付ける。
「お前、ズルイぞ」
 口唇を離すと、ギイはぼくの足に手を掛け一気に押し入った。
「あ………あぁ!!」
 疼いて物足りないと悲鳴を上げていたソコに、熱く堅い衝撃が突き刺さる。逃さないとばかりに、反射的にぼくの体がギイを締め付けた。
「く……っ……オレの負けだよ。託生………」
 安堵の吐息さえも洩らせないほど速いスピードで、ギイが妖しく腰を揺らす。
「ふぅ……あ…ぁ………」
「そんな目で見られて、正気でいられるわけないだろ?」
「あ……あん………!」
「託生……託生………!」
 早すぎてついていけないぼくを思うがまま揺さぶるギイに、ぼくは叫び声しか上げられない。ギイの全てがぼくの中に流れ込んで、頭のてっぺんから足の爪先まで、絶え間なく快感が走る。
「……欲しかった」
「…託生?」
「毎晩……ギイに抱いて欲しくて……ずっと帰りを待ってた………」
 一瞬動きを止め、ぼくの瞳を覗き込むと嬉しそうに微笑み、ぎゅっと抱き締めた。
「オレも……ずっと、託生が抱きたかった……」
「ギイ………!」
「愛してるよ……託生」
 ギイはぼくを膝の上に抱き上げ、乳首に噛り付いた。
「はぁ……っ!!」
 その痛みさえも、快感に変わる。ギイの触れているところ全て、一つに溶け合っていく。
 早く……もう……変になってしまう………!
「も……ダメ………」
 涙ながらに訴えると、ギイはより一層奥深くに突き刺した。とたん大波が来るように渦に巻き込まれ、絶頂を迎える。
 頭の中が真っ白になる瞬間、ギイがぼく最奥に、欲望を放った。
 
 
「託生……」
「う……ん………」
 汗に濡れた前髪をかき上げ、心配そうに覗き込むギイ。
「大丈夫か?」
「うん……」
 口唇にキスを送ると、ほっと息を吐いてぼくを抱き締めた。
 気だるい時間。ギイの胸に頭を乗せ規則正しい心臓の音を聞いていると、自然に目が閉じてくる。
「一人でさっさと大人になっちゃうんだもんなぁ」
 ポツリとギイがぼやいた。
「え?」
 頭を上げてギイを覗きこむと、ちらっと視線を投げ掛け、
「託生。色っぽすぎ」
 怒ったように言う。
「何が?」
「まぁ、昔からお前、目で誘ってたもんな」
「な……!!」
「レベルが上がったってことか」
 一人で納得するギイの頭を、ぽかりと殴る。
「何言ってるんだよ!!」
「託生の色っぽさで子供のギイくんはノックアウトです」
 言いながら、ぼくに圧し掛かる。
「ちょっ……ギイ」
「大人は子供の我侭を受け止めてくれるんだろ?」
「もう、ダメだよ……」
 抵抗を物ともせず、ギイは無邪気に口唇を寄せた。ぼくを逃さない力強い腕。
 子供はこんなに力はないって!!
「愛してるよ、託生」
 深い口づけとコロンの香りに、ぼくの感覚が麻痺してくる。
「愛してる……」
 ぼくより子供だという恋人に溶かされ、もう一度快楽の海に落ちていった。
 
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