朝の風景(2003.4)

 オレの起床時間は6時。
 目覚ましなしで起きちまう。
 尤も、目覚ましなぞ無粋なものをかけて、託生を起こしてしまってはオレの楽しみが減ってしまうのだが。
 託生をオレのキスで起こすのが、恋人の特権というものだ。
 真面目な託生のこと。
 寝る前にしっかり目覚ましをセットしているのだが、それを止める事は許さない。
 託生の可愛らしい寝顔を見ながら、静かにスイッチをOFFにする。
 物音をたてないように洗面所のドアを開け、顔を洗い、着替えを済ませて6時15分。
 託生を起こすには、15分早い。
 その間、自分のベッドに腰掛け、薄暗い室内に浮かぶ天使の寝顔を充分に楽しむのだ。
 6時半。
 ゆっくり託生のベッドに移動し、シーツの端を捲り、体重をかけない様に託生の上に体を滑らす。 
「託生、朝だぞ」 
 柔らかな頬に、キス。
 前髪をかきあげ、キス。
 そして、食べてしまいたい位、可愛らしい口唇にキス。 
「ん〜〜〜〜」
 眠りを妨害された託生は、小さく唸り、寝返りを打とうとする。 
「託生、そろそろ起きろ。6時半だぞ」
 最初に見るものがオレであるように、少し顔を離して目を開けるのを待つ。
 パチパチと瞬きを繰り返し、託生の焦点がオレに合う。
 とたん、ボッと顔を赤くしてオロオロと視線を彷徨わせる。 
「おはよう、託生」
「お………おはよう………ギイ」 
 にっこり笑って体をずらし、起き上がるのを手伝ってやると、素直に体を持たせかけベッドに上体を起こした。
 寝癖で跳ねている髪も、目を擦っている子供っぽい仕草も、全てが無防備で愛しくて、つい抱き締めて口付けてしまう。 
「ギイ………!もう、起きるから」 
 止まらないキスの雨に、託生が根を上げて洗面所に駆け込んだら、オレの朝の楽しみは終了。
 そして、愛しい恋人がドアから出てくるまで、窓を全開して煙草を咥える。
 
 
毎朝託生くんを起こしているギイは、一体起こすまでの間、何をしているんだろう・・・・・と、書いてみました。
プラトニックな時でも、結構キスとかしてそうだ(笑)
 
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