勘違い (2002.2)

 消灯を迎え電気も消えた305号室。
 今日は体育があった為、おとなしくお互いのベッドに横になり、オレはうとうとと眠りに引きずり込まれそうになった時、隣のベッドから小さな声が上がった。
「ね、ギイ。まだ起きてる?」
「起きてるよ。何だ、眠れないのか?」
 託生の方へ寝返りを打った。
「あのさ」
「うん?」
「そっち、行ってもいい?」
 お?やっとその気になってくれたか。
 オレがNOと言うわけないじゃないか!
「いいよ。どうぞ」
 上ずった声にならないよう努めて平然に応え、オレはシーツの端を捲った。
 託生はゆっくり起き上がり、オレのベッドに腰掛けると、シーツの中に潜り込んだ。
 さて、託生からの誘いなんて滅多にない事だから、じっくり時間を掛けた方がいいかな、などと考えているオレの気持ちを知ってか知らずか、託生はごそごそとオレに擦り寄ってきた。
 今夜は、珍しく積極的だな。
 嬉しさに顔が緩み、託生に口を寄せた時、今度は下の方にずりずりと降りていく。
 ん?
 託生はオレの胸の辺りに頬を寄せ、横向きのまま背中に腕を廻すと、大きく息を吐き瞳を閉じた。
「おい」
「なに?」
「キスできないじゃないか」
「え?」
「そのつもりで、来たんだろ?」
 きょとんと見上げた託生の顔が赤く染まった。
「そんなつもりないよ!ただ、寒かったから………」
「寒かったから、オレをカイロにしたのか?」
「うん」
「おまえなぁ」
「だって、ギイ暖かいんだもん」
 どっと脱力する。
 こんなにぺったりと抱きつかれて、オレに我慢しろと言うのか?!
「暖房代は、体で支払ってもらおうか」
「やだよ。昨日もしたし、今日は体育で疲れてるんだよ。ぼく、もう眠たい」
 言うなり、託生は瞳を閉じて
「おやすみ」
 眠りの世界に引き込まれていった。
「託生〜〜」
 呼びかけようが、何をしようが、目を覚ます気配はない。オレはというと、下半身がすっかり起きてしまって、眠れる状態ではなくなってしまった。
 バスルームで処理してこようかと、託生の腕を外しにかかると、反対にぎゅっとしがみつかれてしまう。
「おまえな、これは拷問だぞ」
 深い溜息を付き、託生の頭をこづく。
「う〜ん」
 安心しきった顔ですやすやと寝息を立てる託生に、苦笑が漏れる。
「しょうがないな」
 託生の背中に腕を廻し、寒くないようにシーツを整えた。
 今日の代償は明日払ってもらうとして、これから寒さが厳しくなるのに、毎晩こうだったら幾らなんでも理性が持たない。何か対策を考えないとな。
 しかし、オレも少し眠くなってきた。暖かいと眠りやすいんだな。
 対策は明日にして、心地よい眠りに身を任せることにしよう。
「おやすみ、託生。オレの夢を見ろよ」
 託生の髪にキスを落とし、オレも瞳を閉じた。
 
 
 
たまには我慢する日があってもいいでしょ?と絶倫ギイを懲らしめるために書きました(笑)
いや〜、ギイをいじめるのが楽しく楽しくて♪(性格悪)
こういうギャグ話は、顔をにやけさせながら楽しんで書いてます。
(2002.9.4)
 
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