三夜(2010.9)*Night*

 バスルームから出たぼくを迎えたのは、月の光が差し込む薄暗い室内だった。
「ギイ?」
 ぼくの声に応えるように、ベッドの軋む音。
「託生………」
 声と共に、ギイのコロンと優しい腕に包まれ、ぼくの心臓がドキンと鳴った。
 初めて抱かれてから、3日目の夜。
 昨晩も、ギイとベッドを共にした。
 ギイはぼくの気持ちを最優先にし、ぼくに負担を掛けないように、二人の気持ちを確かめるように、優しく………とても優しく抱いてくれた。
 でも、今ギイの腕の中にいると、もっとギイに触れたい、もっとギイに触れられたいという欲求が湧き上がってくる。
 なのに、どうしたらいいのかわからないのだ。
 心に、体に、感じたことを封印しなくてもいいのだと、そのまま素直に表してもいいのだと、ギイはぼくに教えてくれた。
 でも、頭の中では理解できても、染み付いた感覚はぼくに戸惑いと躊躇いを与えるのだ。
 ギイにどうやったら伝えられるのか、それとも伝えない方がいいのか。理性と欲望の狭間、どっちの波に任せればいいのか、ぼくにもわからない。
 そんなぼくの葛藤に気付かず、ギイはぼくを抱き上げ優しくベッドに横たえた。
 そして少し骨ばった大きな手でぼくの頬を包み込み、欲望を乗せた目でぼくを見つめた。
「愛してるよ」
「………うん」
 目を閉じると、口唇を柔らかく包み込まれる。
 上唇、そして下唇を舐められて自然開いた口に、熱い塊が入り込んできた。頬から滑るように回された手が頭の後ろに移動し、深く深く舌が絡まりあう。
 息が乱れる。鼓動が早くなる。
「ギ………イ………」
 ひとしきり唾液を交換し満足したギイは、少し体を離しぼくのパジャマを脱がせ、素早く自分のパジャマも脱いだ。
 重ねられた人肌にホッと溜息を吐いたぼくに、安心したように、満足したように、また口唇を熱く重ねてくる。
 その熱い思いに、ぼくの心が強く揺さぶられた。
 ギイが、ぼくを求めている。
 そのことが、ぼくに自信と勇気を与えてくれる。
 ギイの背中に回した腕に力を込めると驚いたようにギイは動きを止め、瞬時かき抱くようにぼくを抱きしめた。
「愛してる………愛してるよ、託生」
「うん……ぼくも………」
 少し掠れたギイの声が、愛おしくて嬉しくて、ギイの口唇にそれを重ねた。


 交じり合う熱い吐息。交じり合うぼく達のカラダ。
「託生………」
「ん!あ、やっ………」
 焦らすようなその動きに、漏れる声を抑えようと咄嗟に手で口を塞ぐも、ギイが強い力でシーツに縫い付けた。
「ギイ………?」
「託生の声が聞きたい」
「え………ギ………イ……っ!」
「オレを感じてくれてるんだろ?」
 だから、声を聞かせてくれ。
 口唇を啄ばみながら、ギイが囁く。
「で………も………あっ!」
「オレも、託生を感じたいんだ」
「ぼく……を………?」
「そう」
 うっとりと目を細めて、熱く少し汗ばんだ手が優しくぼくの体を撫でる。触れる手の熱さが、そのままぼくの肌に移ろい、全身に広がっていく。
「託生がオレを感じてくれるように、オレの手も口唇も目も耳も………全てで託生を感じてる」
「ギ……イ………っ」
 証明するように、ギイは下半身をぼくのモノにこすり付けた。
「熱……い………」
「あぁ………もっと熱くさせて?」
 甘えるようにぼくの胸に頬を摺り寄せ、乳首を口唇に含む。
 とたん、ジンジンと熱が集まり、そこが硬くしこってくるのがわかった。
 そして、ぼくの後ろに腕を回し、ジェルに濡れた指を探るように奥へと突き刺す。
 1本、2本………そしてバラバラに動く指。
「あ………んぁ…………」
「もっと、感じて………託生………」
「ギイ……ギイ………も………ぅ…………!」
 感じすぎて疼くソコに耐え切れず、ギイにカラダを摺り寄せる。
「託生、愛してる」
 ギイは、満足そうに笑うと、彼の欲望でぼくを一気に貫いた。


 激しい嵐が過ぎ去った静けさのような、ゆったりとした時間。
 髪を撫でるギイの優しい手に、意識が遠ざかっていく。
「オレが全部受け止めてやるからな、託生………」
 母親の子宮にいるような絶対的な安心感の中、ぼくは眠りに落ちた。



えー、フォルダにあったものです。
たぶん、エッチ続けるつもりだったのでしょう(爆)
でも、これもゴミ箱に行きそうな状態なので、アップします。
しかし生温いエッチだなぁ。
(2010.9.19)
 
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