Secret(2003.11)

 ギイが友人に呼び出され、帰りは消灯間際だろうなぁと考えたぼくは、少し時間が早かったのだが、お風呂に入る事にした。
 いつもなら、順番を待っているギイに気を使い、ゆっくりと浸かる事が出来ないのだが、今日は別。
 温いお湯に体を沈め、眠るように目を閉じて、ホッと溜息を吐いた時、突然ピンポンパーンポーンと、お気楽な放送が鳴った。
 
『今から、3階の持ち物検査を行います。各自、自室に戻ってください』
 
 うわっ。
 別に隠すような物はないのだけど、とりあえずお風呂から出なければならない。バスルームも検査対象になっているのだから。
 ついでに、自室で待機というのは、廻ってくる間に別の階にブツを持っていかせない為のものである。
 ぼくは、お風呂のお湯を抜き、脱衣所で体を拭っていると、
「託生!!」
 突然、ドアが開きギイが飛び込んできた。
「ギイ、寒い!!」
 慌てて体を隠し、ギイを睨む。
「あ、悪い」
 悪いと思っていないような表情で、口だけ謝罪を言い、
「それより、隠すものあるか?」
 と、慌てた様子でぼくに問う。
「ギイじゃあるまいし、何もないよ。それより、寒いからドア閉めて」
「わかった」
 バタンとドアを閉めた向こう側からは、なにやらバタバタと物音が聞こえる。
 それは、そうだろう。
 酒、煙草、携帯電話。
 エッチな本は持っていないだろうが、見つかれば数日停学処分を受けるものが、この部屋にはあるのだ。
「隠すくらいなら、止めればいいのに」
 呆れながらぼくは身支度を整えドアを開けると、既にギイは自分のベッドに腰掛け、雑誌を読んでいた。
 さすが、ギイ。素早い………。
 そう思った矢先、ノックが響いた。
 
 
「やれやれ、いつもの事ながら疲れるなぁ」
 にこやかに島田先生及び風紀委員の面々を見送り、ギイはベッドにゴロンと横になる。
「確かに、物々しいよね」
 検査と言えども、やはり自分の荷物をひっくり返されるのはいい気がするものじゃない。
 しかし、これがなければ、寮内は無法地帯になってしまうだろう。
「ところで、ギイ。一体、どこに隠したのさ?」
 向こうも、プロ。与えられた部屋の中で隠せる場所というのは限られているもので、もちろんそれを把握されている。
 隠し場所に窮した人達が、どうしようもなく窓の外に投げ捨てる選択をするのは日常茶飯事。
 しかし、ギイのことだ。
 捨てるなんて、勿体無いことは絶対しない。
「あ?………あぁ」
 ギイは、ニヤリと笑うとカーテンを開け、窓も開けた。
「ここ」
 窓を乗り出して指差す所を見ると………。
 呆れた。
 いつのまに窓枠に釘なんか………。
「窓の外までは見ないだろ?纏めて、ここにかけておけばOK」
 まさか窓の外にぶら下げているとは、誰も思わないだろう。
 しかし………。
「ギイって、大胆」
「今に始まったことじゃないだろ?」
 飄々とのたまって、「それより、託生」と背後から抱き締めた。
「もう今日は部屋から出て行けないし、客が来る事もない」
 首筋に口唇を押し付け、チュッと音を立ててキスをする。
 くすぐったさに首を捩ると、まだ湿った髪に口唇を移動させた。
「見つかったらヤバイ事、しようか?」
 悪戯っぽく目を細めたギイの頬に同意のキスを返すと、ギイはぼくを抱き締めたまま、開けっ放しの窓とカーテンを閉めた。
 
 
 
一体、何を書きたかったのか?!
当分書いてなかったので、リハビリみたいなもんで;
珍しく、ちゃんとキスしてないギイタクでした。
(2003.11.30)
 
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