残骸(2004.3)

「それでね、ギイ」
 興奮気味に話す託生に相槌を打ちながら、オレの意識はさくらんぼ色をした口唇に釘付けになる。
 赤く色づき艶やかに光を反射して、存在を知らしめる。
 あの口唇は、どれだけ柔らかいだろう。
 その奥に息づいた熱い塊は、どれだけ溶け合うだろう。
 考えるだけでオレの体は逆流して、身を焦がすほど熱く変化していく。
「ギイ?」
 そして、オレの名前を紡ぐとき。
 その熱は頂点に達し、理性と言う名のダムにせき止められていた流れは激流に変わり、託生を自分の物にするべく新しい道を作っていく。
「愛してる、託生」
 突然の抱擁に意味がわからず、あたふたと慌てる託生の体を腕の中に閉じ込め、色づいた口唇にそれを重ねる。
 予想通りの柔らかさに笑みが漏れ、吐息さえ逃さぬように深く深く追い求めると、脱力したように託生が身を任せた。
「託生………」
「…………馬鹿ギイ」
 目尻を赤く染めながら、潤んだ瞳を隠しもせず、正面から射抜いた視線に、理性などと言う人間らしい感情は飛んでしまった。
 残ったのは………白いシーツに汗ばんだ熱い体と白い液体だけ。
 
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