ギイの隠れ趣味? (2003.4)

「あれ?ギイ、携帯変えたの?」
 久しぶりの300号室で、ぼくの為にコーヒーを用意している背中に訊いた。
「いや、変えてないぞ」
「え?これ携帯じゃないの?携帯にしては大きいような気もするけど」
 机の上に置かれた、携帯らしきものを取り上げ、ギイに示す。
「あぁ、それか」
 ギイは手にしたカップをソファの前に置き、ぼくの手からそれを取り上げた。
「これはな、スマートブレイン社が作った、人工衛星からデータを取り出すための携帯だ」
「スマート………?」
「スマートブレイン」
 ふぅんと、ギイから携帯を渡されパチンと中を開けてみる。
 なるほど。
 確かに液晶とダイヤルボタンは付いているが、その他に「ENTER」ボタンがある。
「実はな、これすごいモノなんだぜ」
 どこがすごいのかわからないけど、ギイが言うのなら、なにかすごい秘密がありそうな気がする。
 教えてくれないの?とギイを見返すと、おっほんと咳払いなどをして、やけにかしこまってギイが言った。
「この携帯で『555 ENTER』と押すとな、なんと!」
「何?」
「仮面ライダー555に変身できるんだ!」
 ………………………くらくら〜〜〜〜。
「何に、変身できるって?」
「仮面ライダー555」
「そう、よかったね」
 どれだけすごいものかと思ったら、単なるおもちゃじゃないか。
 期待して損した。
「おい、真剣に聞いてないだろ」
「別に真剣に聞く内容でもないだろ?第一以前にも聞いたじゃないか。腕にカードを装着してとかなんとか」
「あれは、仮面ライダー龍騎だ」
「変わったの?」
「そう。変わったんだ」
 階段長の仕事で忙しいんじゃなかったっけ?一体、いつこんなおもちゃ買いに行ってるんだか。
「ここをこう曲げるとフォンブラスターだろ。ファイズポインターと合体させてビームを出すんだ」
「はいはい」
 うきうきと子供のように話すギイに、心底呆れてしまう。
 これ以上訊いていると、せっかく入れてくれたコーヒーが冷めてしまうので、ギイを残してソファに移動した。
「おい、まだ話は終わってないぞ」
「話だったら、飲みながら聞くから」
 そうか?と胡散臭そうな顔をしながら、それでもおもちゃを片手に話を続ける。
「それでな。今度の主人公、イヌイ タクミって言うんだ」
「ぐっ!ぼくと同じ名前?」
「それでな、託生」
 ギイは、携帯もどきとベルトをぼくの膝に置いた。
「ファイズに変身してくれ」
「………………………」
 ぼくの両手挟みパンチが見事に決まった。




近所のスーパーに行ったら、「仮面ライダー555」の主題歌が流れておりまして、そうしたら、なぜか頭にふわふわ〜と浮かんでしまった。
ギイファンの方、ごめんなさ〜〜〜い!!
(2002.4.8)
 
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