プチの呟き(2002.4)

「ただいま〜」
「お帰り、託生」
 ふっと空間に浮かび、にっこりと微笑を浮かべた託生に、ギイは驚きもせず当たり前のように言葉を返した。
 入れたばかりのコーヒーにミルクを並々と注ぐと、ソファにちょこんと座った託生の前に置く。
「オレの様子、どうだった?」
「う〜ん。仕事が忙しくて、ここのとこぼくに会えなかったみたいで、結構煮詰まってたよ」
 暖かいカフェオレを小さな手で包み込んで、フーフーと冷ましながら上目遣いでギイを見る。
「相変わらずだなぁ、オレ。」
「うん。だから自然史博物館に行って、慰めてきた」
「お疲れ」
 ギイの言葉に、にっこりと笑って一口飲む。
「しかし、手の掛かるヤツらだな」
 しかめっ面をするギイに、
「でも、こないだ役得だって、ぼくにキスしてたじゃないか」
「そういうお前だって、さっきオレにキスしてただろ?」
「あれは……ギイが泣きそうになってたから………」
 しどろもどろ言い返す託生に、ギイはふっと笑って、
「なぁ、今度は島岡の夢に行ってみないか?」
 と、提案した。
「島岡さんの?イヤがるんじゃないかな………」
「面白そうじゃん。ドライブでも連れて行ってもらおうぜ」
「………なんか、現実でも夢の中でもギイに振り回されて、島岡さん可哀想」
「まぁまぁ」
 こうして、次の悪戯の餌食は、島岡に決まった。
 
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